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PRESS RELEASE

2020.12.04

京大大学院 近藤研究室(医学研究科社会疫学分野)との共同研究を論文発表

京大大学院 近藤研究室(医学研究科社会疫学分野)との共同研究 
「コロナ流行下における食生活の変化」を論文発表 
在宅ワークは「野菜と果物の摂取量増加」に貢献!一方、子育て時間が増えた人には悪影響も

株式会社リンクアンドコミュニケーション(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:渡辺 敏成、以下 当社)は、京都大学 大学院医学研究科社会疫学分野(教授:近藤 尚己)と共同で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の発令による生活様式の変化について研究しています。このたび、緊急事態宣言期間中の食生活の変化について学術論文を発表いたしましたのでお知らせします。

共同研究の調査サマリー

  • 「緊急事態宣言」期間中は、1ヶ月の自炊回数が4.5回増加(※1)
  • 「在宅ワーク」の人は、野菜119g、果物266gの摂取量が増加(※2)
  • 「子育て時間」が増加したひとは、野菜276g、果物333gの摂取量が減少(※2,3)
  • 「うつ傾向」があるひとは、野菜481g、果物472gの摂取量が減少(※2,3)

※1 緊急事態宣言前、毎食自炊した品目が1品あった人を基準とし1ヶ月あたりの変化を算出
※2 緊急事態宣言前、野菜を70g食べていた人を基準として1ヶ月あたりの変化を算出
※3 緊急事態宣言前、果物を50g食べていた人を基準として、1ヶ月あたりの変化を算出

 

■自炊頻度:全体の自炊回数は4.5回増加も、調理時間を削って子育てする人がいる可能性を示唆

図1:生活様式の変化と自炊頻度の関係(1ヶ月あたりに換算) n = 5,929名

緊急事態宣言前 (2020年1月1日~4月6日)と緊急事態宣言期間中(2020年4月7日~5月13日)の平日に自炊した品目を食べる回数を比較したところ、全体の自炊回数は1.05倍、もともと毎食自炊した品目を1品食べていた人では1か月あたり4.5回増加することが分かりました。また、在宅ワークをする人は、そうでない人と比べて1.02倍、1ヶ月あたりに換算すると1.9回増加の傾向が見られました。

一方で、緊急事態宣言中に子育て時間が5時間増えた人では0.98倍(-2%)、1ヶ月あたり1.4回減少、つまり調理の時間を削って子育てをしている可能性があります。うつ傾向がみられた人ではさらに少なく0.93倍(-7%)、1ヶ月あたり6.1回減少することが分かりました。

■野菜摂取量:野菜摂取量が「レタス約1個分」増加、生活様式の変化は食生活にも影響

図2:生活様式の変化と野菜摂取量の関係(1ヶ月あたりに換算) n = 5,929名

緊急事態宣言前と緊急事態宣言期間中の平日の野菜の摂取量を比較したところ、緊急事態宣言前よりも全体では1.06倍、もともと毎食野菜を70g食べていた人では、1ヶ月あたりに換算すると385g増加することが分かりました。これは、「レタス1個分」の増加に値します。また、在宅ワークをする人は、そうでない人に比べて1.02倍、1ケ月あたりに換算すると119g増加するという結果になりました。ワークスタイルの変化により野菜の摂取量が増加していることが分かりました。

一方で、「子育て時間」が5時間増えた人では、0.96倍(-4%)、1ヶ月あたりおよそ276g減少、「うつ傾向」がある人においてはさらに少なく、481gつまりレタス1.4個分減少すること分かりました。(※4)

今回の研究はカロママユーザーを対象にしたものであり、日本人全体に当てはまるとは限りませんが、仮に日本の人口約1億2000万人のうち、緊急事態宣言により、1割の人で今回のように385gの野菜の摂取量が増えた場合、1ヶ月あたりおよそ46,200トンの野菜を摂取したことになります。

野菜の摂取量の結果も踏まえ、これらの結果から、緊急事態宣言の発令により、生活様式の変化を余儀なくされ、食生活にも影響していることが分かります。さらに今後、私たちの健康だけでなく、食品ロスにおける経済や社会的な影響も懸念されるかもしれません。

※4 レタスの個数は1個350gとして算出

 

■果物摂取量:在宅ワーカーは「バナナ1.8本分」増加、うつ傾向の人は「バナナ約3本分」減少

図3:生活様式の変化と果物摂取量の関係(1ヶ月あたりに換算) n = 5,929名

緊急事態宣言前と緊急事態宣言期間中の平日の果物の摂取量を比較したところ、全体で緊急事態宣言前より「在宅ワーク」が5時間増えた人は、そうでない人に比べ1.06倍、もともと毎食果物を50g食べていた人では1ヶ月あたりに換算すると266g増加することが分かりました。これは、1ヶ月あたり「バナナ1.8本分」の増加に値します。(※5)

一方で野菜と同様に「子育て時間」が5時間増えた人の場合、果物の摂取量は減り、1ヶ月で0.9倍、333g減少するという結果になりました。「うつ傾向」がある人ではさらに少なく、472gの減少がみられ、これは「バナナ約3本分」の減少に値します。

今回のような新型コロナウイルスの拡大における生活様式の変化や、うつなどのメンタル不調は、日々の野菜および果物の摂取など食生活にも影響を及ぼしていることが明らかとなりました。このような食生活の変化を観察し、パンデミックが長期化するなかで食事の変化に気づき、健康のための食事を実現するために適宜改善をすることは、重要であると考えられます。

当社は引き続き、アプリを通じて食事等のライフログデータを経時的に追い、健康を支える実用性のあるサービスと情報を発信していく予定です。

※5 バナナの本数は、1本150gとして算出

共同研究を行った京都大学大学院近藤研究室からのコメント(※6)

〇京都大学 研究員 佐藤 豪竜先生

今回の研究は、カロママユーザーの食事ログのデータを用いて、緊急事態宣言の前後で食事内容がどう変化したか追跡しました。従来の質問票を使った調査方法では、食事内容に関して「思い出しバイアス」が生じるので、毎日の食事内容が記録されている健康管理アプリのデータは貴重なものです。変化量は小さく見えるかもしれませんが、食事は毎日のものです。「ちりも積もれば山となる」で個人の健康、ひいては社会全体に大きな影響を与えます。とはいえ、自分で小さな変化に気付くのは難しいので、健康管理アプリなどを使って毎日の食事を記録して、変化を「見える化」することが大切です。

◆佐藤 豪竜 先生(公衆衛生学修士)
・京都大学 大学院医学研究科社会疫学分野 研究員
・厚生労働省 課長補佐
・MPH(ハーバード大学)

〇京都大学 教授 近藤 尚己先生

在宅ワークが持ちうる健康上のメリットの一端を示唆する貴重なデータだと思います。反対に、抑うつ傾向の疑いのある方や子育て時間が大幅に増えた方などで野菜や果物摂取量が減る傾向にあるなど、今、社会として守るべき人々が誰かを一部明らかにした点も重要です。新型コロナウイルスの流行が社会生活や健康状態にどのように影響を与えたかを明らかにできるデータが限られている中で、このような健康管理アプリの活用はとても重要だと思います。引き続き、様々な切り口で現状を明らかにしていくとよいと思います。

◆近藤 尚己 先生(医師・医学博士)
・社会疫学者 ・公衆衛生学研究者
・京都大学 大学院医学研究科 教授(社会疫学分野)
・日本老年学的評価研究機構理事
・日本疫学会代議員
・日本プライマリケア連合学会代議員

※6 各コメントは発言者個人の意見であり、所属する組織の見解を代表するものではありません

論文の概要

〇 題名
Working from Home and Dietary Changes during the COVID-19 Pandemic: A Longitudinal Study of Health App (CALO Mama) Users
COVID-19の流行期間中の生活様式が食生活に及ぼす影響:健康アプリ「カロママ」の利用者を対象とした縦断的研究

〇 著者 (全員)
佐藤 豪竜(1)、児林 聡美(2)、山口麻衣(3)、佐々木 由樹(2)、坂田 良平(2)、村山 知聡(2)、近藤 尚己(1)

(1)京都大学 大学院医学研究科社会疫学分野 
(2)株式会社リンクアンドコミュニケーション
(3)東京大学 大学院医学系研究科 公共健康医学専攻 健康教育・社会学分野

〇 書誌情報
Social Science Research Network (SSRN) Electronic Journalに掲載。
URL: https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3707230

※この論文は、コロナによる生活変化の影響をいち早く発信することを目的に、プレプリントサーバー(SSRN)において公表されたものであり、査読(同研究分野の別の専門家による評価)を経ていないため、留意が必要です。なお本論文は、今後、査読付きの学術誌へ掲載予定です。

調査の概要

〇 調査の背景
今回の新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が全国で発令されたことにより、過去に例のない生活様式の変化を余儀なくされました。急な在宅勤務の導入による労働環境の変化が家庭での家事や子育てに影響する場合に心配されるのは、健康的な食事を作ることが出来なくなることです。さらに、うつの増加による食事の変化も懸念されます。
今回、AI健康アドバイスアプリ「カロママ」の食事に関するデータおよびWeb調査を使用し、生活様式が食生活の変化にどのように関連しているかを分析しました。

〇 分析期間
2020年1月1日~5月13日
ただし、2時点の比較は、緊急事態宣言前(2020年1月1日~4月6日)と緊急事態宣言期間中(2020年4月7日~5月13日)を利用。

〇アンケート期間
2020年4月30日~2020年5月8日

〇アンケート内容

●生活様式の変化について
新型コロナウイルス感染拡大前と緊急事態宣言後の平日の平均的な所要時間について、以下それぞれを前後比較。

・睡眠時間
・通勤時間
・職場で働いている時間
・自宅で働いている時間
・子どもの世話をする時間
・家事をする時間
・食事をする時間
・運動をする時間

●「うつ傾向」の判断について
下記の1つでも該当した場合に「うつ傾向」と判断
・この1ヶ月間、気分が沈んだり、憂うつな気持ちになったりすることがよくある
・この1ヶ月間、どうも物事に対して興味がわかない、あるいは心から楽しめない感じがよくある

〇 分析対象者
AI健康アドバイスアプリ「カロママ」の利用者で、下記2点の条件に該当した5,929名

・アンケートに回答し、データを研究目的に利用することに同意した方
・緊急事態宣言の発令前(2020年1月1日~4月6日)と緊急事態宣言期間中(4月7日~5月13日)の平日の食事データが得られた人

今回分析した結果は、比較的健康への意識が高い層であるアプリ利用者のデータを用いたため、日本全体の状況にはそのまま当てはめられない可能性があります。